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「すずめどこよ?」
部屋に戻った沖那君に、ウナ先輩はヤニを吹き付けながらそう言った。
「すずめちゃんは来られないって。でも詫び金と手切れ金ってことで、これを渡された」
「あんだこれ、舐めてんのか?」
沖那くんの腰を抱き寄せて隣に座らせると、菓子箱を取り上げた。片手で乱暴に蓋を開けると、中にはくしゃくしゃの万札がぎっちりと収まっていた。
「お、結構な額じゃねえのこれ。でもこれだけで許してやるわけにはいかねえし。面子かかってっし、こっちはネンショー行かされてんだ。すずめが出てきて頭下げらんないってなら、こっちからカチコミ行くしかねえよなあ」
万札をがさがさいわせて掴みとるウナ先輩の、虹色に染めたばかりの髪が四方八方にはねている。抱きかかえられたままの沖那君は、針金のような毛先をなめらかな頬に突き刺されながら思い出した。
「もう一個大きなせんべいの缶があって、どっちか選べって言われたんだ。雰囲気がやばくて小さい方掴んで出てきたけど、そっちにはもっと入ってるのかもしれない。それを取り上げて、すずめちゃんと仲直りしたらどうかな」
沖那君としては、なんとか平和的な方向で収める提案のつもりだった。
だがウナ先輩は突然沖那君をひっぱたくと、それから急いで頬をなでて傷が無いか確かめた。ウナ先輩のキレるタイミングは誰にも分からず、そしてウナ先輩はすこぶるキレやすい。だからこそ最凶なのだ。
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