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「絶対、ウラがある」
捜査一課のヒロ刑事は、めずらしく刑事らしいことを言った。
「ヒロ先輩、考えすぎですよー。シーサー課長にかぎってそんな……」と言いかけて、ウルフ刑事はゴホゴホと咳をして、うっかり上司をあだ名で呼んでしまったことをごまかした。
「えーっと。比嘉課長の思いやりを信じましょう……よ」
名前を正しく呼び直したものの、ウルフ刑事の歯切れは悪い。シーサー課長こと比嘉課長に騙しうちされて、心霊関係の事件に投入された過去がいくつも脳裏をよぎったからだ。
「ウルフ、甘いぞ。二度あることは三度ある。三度あったら、もはや日常茶飯事ってことだ」
「おーい、ヒロ&ウルフ、ちょっと来てくれ」
話題の人、比嘉課長がデスクから二人を手招きして二人を呼んだ。大きな口から白い歯がニカッとむき出しになった笑顔は、沖縄の守り神、シーサーに似ている。
「ほらな? 甘いサーターアンダギーの後は苦いゴーヤー。何か面倒な事を押しつけられるに決まってる」とヒロ刑事は、自慢げに顎をしゃくった。
「ええ〜。ヤダ。じゃあ、行きたくないですよぉ」
ウルフ刑事はフルフルと首を横に振った。
「あらかじめ警戒しておけば大丈夫だ! オレにまかせとけ!」とヒロ刑事はウルフ刑事をグイグイ引っ張ってデスクに向かう。
比嘉課長も立ち上がり、両腕を広げて二人に歩み寄ってくる。
「二人とも、もう今日は帰って、特別休暇に入っていいぞ」
「えっ! 本当にいいんですか?」
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