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「…途切れた・・・?」
そう言った少年の足元からじわじわと、
熱が侵食して床を抜ける。
「逃がすな・・」
立ち上がり走ろうとした男達に、少年が視線を向ける。
たったそれだけで、男達と少年の間に炎が道を閉ざす。
「アイツ、詠唱しなかったぞ」
「とにかく追え」
「いや消火だ、別の特Aが逃げるかもしれん。
法術士だ、結界を強化しろ!」
皆が一斉に叫び、それぞれに走り出す。
いや、逃げたいのだ。
この少年から一刻も早く。
心を凍らせればどんなにいいだろう?
奴らの声に耳を塞げれば、どんなにいいだろう。
聞きたい声だけを聴けたらいいのに・・・
下へ下へと重力のまま、階下へゼオンは落ちてゆく。
そうだ、ゼオンには聞こえる。
感じられる、感じてしまうのだ。
手に取るように。離れてもなお。
怒りが。
嘆きが。
恐怖が。
憎しみが。
そして差別する人間の心の声が。
逃げる人間。
逃げたがっている、職務さえ放棄したがっている。
俺が・・・・・
コ・・・・ワ・・・・い・・・・?
人間じゃないから・・・
でも・・・
だったら獣人族なのか?
俺はどっち・・・・だ?
逃げる1人がエレベーターホールへ走る。
なぜ、そんなにゆっくり?
高速エレベーターなのにどうして・・・
スローモーションみたいだ。
中央センターと教育塔の中心であるラボ行きの直通だ。
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