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ゼオンは叫ぶ彼女を離さない。
突風の中心で、群れる人間の宙を飛ぶ機械に、四方を阻まれても
「俺がお前を守るから!」と少女に叫ぶ。
少年は呪文を唱えない。
詠唱なしに少年は右手を宙のまま振り下ろした。
突風が機械を直撃し、そのまま空中で360度を1回転する。
周りの飛ぶ機械を巻き込むと地上すれすれを掠め、
集まった銀の甲冑たちさえ、街道の家々にぶつけて
屋根や壁を崩落させる。
粉塵が上がる。
空飛ぶ機械、エアロバイク。
そのエアロバイクから投げ出された数少ない人間が叫ぶ。
「何だコイツの魔力は!」
「まだ子供だぞ」
巻き込まれた甲冑の金髪たちも生きていた。
さすがに壁を崩落させる勢いだ。
瓦礫から這い出ると、
救助兵が酸素ボンベのようなものをその金髪に差し出した。
頭を割られている。
兜ごしにたらりと血が顔半分に垂れ流れてきた。
眩暈で視界がぼやけ、ボンベの空気で息を整える。
鬼神のような目で少年を見つめる。
「おのれ・・」
「おのれ・・」
「子供のくせに・・」
金髪の視界がブラックアウトしてそのまま倒れた。
そうだ、少年はまだ13歳にも満たない。
少女はもっと幼い。
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