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足早に街を駆ける。
ビビット族(ウサギの獣人族)は並の人間からは桁違いの
運動能力だ。
それでも包囲され、逃げ場を失った。
人間は宙を飛ぶ機械で四方から追ってくる。
彼女には強力な攻撃魔法はない。
「誰か来て・・・お父さん」
膝まづきフードをかぶった頭を抱える少女に対し、
すらりとした男が突然、宙から降ってきた。
「お父さん!」
「ここに居たのか‥ゼオンはどこだ⁉」
「はぐれて・・」
不安からか、安心したのか、見る間にしゃくりあげた声になる。
話し声は突然途切れた。
宙を裂く熱線。
一斉に火を噴く。
「いやああ」
とっさに父が我が子を抱きしめ庇った。
背に熱線の雨を浴び、それでも宙高く飛び上がる。
肉を焼く臭いに血の臭いが混じる。
「Aruba!」
それでも父が指さした先、四方の機械を
人間ごと氷漬けにする。
魔法だ。
「ArubaFreeze」
さらに目くらましの雪嵐を作った。
そのまま落下する宙の機械を背に娘を抱き
150m以上のジャンプをする。
耳に風の音。
屋根を軽々飛び越え、上昇気流に乗って風をつかむ。
メインストリートの街道を超え、反対側の
向かいの屋根さえ超えた。
全く違う裏道へ着地する。
けれど。
「お父さん、血が・・」
娘が両手を押し付け止めようとするけど、止まらない。
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