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先生の思いが今まで以上にオレの中に流れ込み、先生がどんなにオレを愛してくれているかを再確認する。
オレの思いも先生に伝わって・・・。
オレがどんなに大好きか。
どんなに先生が大切な存在か。
「愛してるよ」
先生のその言葉を最後に、オレの意識は完全に飛んでしまう。
その後の発情期間は今までになく濃かった。
番どうしの発情期がどんなにすごいものなのかを実感し、オレたちは無事に番になった。
「オレも行きたい」
オレの発情期が少し遅れてしまったために、婚姻届を出す予定の日が発情期の最終日になってしまった。だから届けを出しに行くのが先生だけになったんだけど、こういうのは一緒に出しに行くもんじゃないの?
「ダメだよ。まだ明けたばかりで身体がだるいだろ?」
「でも・・・」
一緒に行きたい。
「それに君のそんな色っぽい顔を他の誰かに見られたくないからね」
そう言って先生はオレのおでこにキスをする。
「すぐに出して帰ってくるから、君はまだ休んでいなさい」
本当にオレの身体を心配してくれてるのが分かるから、オレもそれ以上は言えなかった。
「分かった。待ってるからちゃんと出してね」
「もちろん。じゃあ行ってくるね」
そう言って『いってきます』のキスをすると、先生は笑って出て行った。
そんな先生を見送って、オレは改めて先生との繋がりを実感する。
傍を離れても、なんだか先生が近くにいるみたい。
そう思ってまだガーゼを当ててあるうなじにそっと触ってみる。
まだじくじく痛いけど、この傷が癒えたら先生の歯跡が残るんだ。
そう思ったらすごく嬉しくて幸せだった。
また一番幸せな時が更新された。
それが嬉しくて、休んでいなさいって言われたのにオレは溜まった洗濯を始めた。
洗濯機を回しながら今日の夜ごはんを考える。
やっぱりお祝いのメニューがいいかな?
そう思いながらできた洗濯物を干し、冷蔵庫の中身を確認する。
買い物に行きたいな。
でも先生がまだ出かけるのを許してくれないかも・・・。
そう思ってふと気づく。
先生、遅くない?
区役所まで車で行ったからそんなにかからないはずなのに・・・。
混んでるのだろうか?
連絡してみる?
でも運転中だったら危ないし・・・。
なんだか胸騒ぎがしてきたその時、突然言いようもない喪失感がいきなりオレを襲った。オレの中からなにか大事なものが無くなったようなその感覚に、オレの身体が無意識に震え出す。
急に襲う不安と身体の震え。
発情期が明けたばかりで動いたから?
でもそれはいつもの事だし、もしかしたら番になったからかもしれない。番になることで、身体が変化しているのかも・・・。だけど番になるってこんなに不安になるものなの?
怖い・・・。
先生、早く帰ってきて。
そう思ったその時、突然スマホが鳴り始める。
その着信音に先生からだと思ったその電話は、知らない番号からだった。
どきどきした。
そういえば前にも知らない番号からかかってきて、その時は母が倒れたという病院からだった。
まさか、先生・・・。
震える手でスマホをタップして耳に当てる。すると知らない男性の声がする。
そしてその内容は・・・。
思わず落としたスマホから、男性の呼びかける声が何度も響き渡る。だけどオレはその場に崩れるように座り込み、何も考えられなかった。
それは警察からの電話で、先生が事故にあって病院に運ばれたというものだった。
その電話では先生の安否は言われなかったけれど、オレには分かった。分かってしまった。さっき感じたあの突然の喪失感。
それは・・・。
番がいなくなってしまったからだ・・・。
先生がオレの中から消えてしまった。
本能的に悟った先生の死に、オレはもう何も考えられない。
その後混乱する頭で、だけどどうにかして先生の運ばれた病院に行くことが出来たのだけど、そこで問題が起きてしまう。
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