しましま

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『幼い時に父親を亡くした君は、もしかしたら僕に父親像を重ねているのかもし・・・れ・・・』 オレは先生の言葉をさえぎって、ぶつかるようにキスをした。 『父親にキスしたいと思いますか?』 そう言ってオレは先生に抱きつく。 『父親ってこうして抱きついて、オレの中に来て欲しいって思うものなの?それとも先生の方が・・・オレのこと子供に・・・だから・・・』 先生は僕に触れてくれないの? そう思ったら悲しくて、オレは先生から離れようと身を引いた。すると凄い勢いで戻され、強く抱きしめられる。 『子供相手にこんな状態にはならないっ』 そう言って押し付けられた先生の下肢は、熱く固かった。 その熱にオレの鼓動は高くなる。 『だったら・・・してください。初めてが発情期なんて嫌です・・・』 そう言ったオレを、先生はようやくベッドに連れていってくれた。 そして初めてのキスをして、先生は初めてオレの肌に触れる。 オレの初恋。 だからキスもその先もこれが初めて。 発情期に自分で身体を慰めはしても、誰かに触れられたことは無い。 特にそんなこと先生には言わなかったけれど、先生はそれを分かっているかのように何もかもが優しかった。 キスも愛撫も・・・。 先生の口と手で何度も高められ、イカされ、そしてあれほど焦がれた先生の物をこの身に受け入れる。それは間違いなく、人生で一番幸せだった。 でもそれもまたプロポーズで書き換えられ、今また上書きされようとしている。 プロポーズから一年。 教授と学生の番も結婚もおかしいだろうと、オレの卒業を待って番になることになった。 そしてそれがちょうどプロポーズしてくれた日の直前だったこともあり、この発情期で番になり、明けてから婚姻届を出そうということになった。 そしてそれが今日だ。 朝から発情期の兆候が現れたオレは先生と共にお風呂を終え、今は仲良く抱き合ってオレが発情するのをベッドの中で待っている。 婚姻届は前もって書いてある。 判も押してあとは出すだけの状態。 徐々に高まる体温と胸の鼓動。 先生はオレの変化を見逃さない。優しく背中を撫でていた手がオレの服を脱がせ始める。するとオレの発情も加速してくる。 早く触れて・・・。 もどかしくなってオレも先生のシャツのボタンに手をかける。だけど発情で震える指先は上手くボタンを外せない。 「大丈夫。慌てなくてもちゃんとするよ」 そう言ってやさしくオレの手を取ると、先生は自ら服を脱ぎ始めた。それを見てオレは向きを変え、四つん這いになると先生に向けて腰を上げる。 「先生・・・早く・・・」 どんどん早くなる鼓動と熱い息。 発情で意識が飛んでしまう前に、早く噛んで・・・。 ともすれば直ぐに飛び散ってしまいそうな意識を必死でつなぎ止め、オレは先生にお願いする。すると先生は既に熱く滾ったその下肢をオレの濡れそぼった後孔にあてがった。 「本当にいいんだね?」 そんな確認いらないっ。 オレは必死に首を縦に振る。 「せ・・・先生・・・は・・・っ?」 「もちろん。君が欲しい」 そしてその言葉と共に一気に奥まで身を沈めた先生は、その熱い唇をオレのうなじに押し当てた。 「一生君の傍を離れない。そして幸せにするよ」 そう言って大きく口を開くと、がぶりとオレのうなじに噛み付いた。 「あっ」 ぶすりと突き刺さる歯は熱く、鋭い痛みが身体を突き抜ける。けれどそこから流れてくる先生の力が身体の隅々まで行き渡り、まるで自分が作り替えられていくような不思議な感覚に包まれる。 痛さはもうなかった。 ただただ熱くて、身体が燃えるよう。 そしてオレの中が先生に満たされたその時、おなかの奥にも先生の迸りを感じ、オレはこれまでに無いくらいの絶頂の中にいた。 「あ・・・ぁ・・・ん・・・」 この時本能的に分かった。 オレと先生は身体だけでなく心も全て繋がったということに。 これが番になるということ。
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