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3年の後期からは、実家を出て大学近くで一人暮らしを始めた。
なんとなく。
そうしたくなった。
元々2年前にするはずだったことなので、両親は協力してくれた。
授業もほとんど対面になったし、就職は首都圏でしたかったのもある。
それでも、よく君の部屋に泊まりに行った。
夕食代は僕が出して。
タコの入っていないたこ焼きを焼いて。
安い酒で、他愛ないことで笑って。
君は早々に就活を終えて、あっさり卒論も書き上げてしまった。
それも、君からしたら寂しかったのかもしれない。
僕の進まないエントリーシートにつきあって。
卒論にうめく僕を笑ってくれた。
卒業式には、また君が卒業生代表の挨拶をしていた。
整えられていたけれど、君らしい言葉だった。
僕がそう思いたいだけかもしれない。
君はそんなつもりはなかったのかも。
壇上に立つ君は、いつも以上に完璧を装っていて、近寄りがたかった。
式が終わってから後輩たちに囲まれているのを横目に見ていた。
それでも、帰り際には一人で。
図書館の前で待っていた。
「うち来ない?」
「コロナがあけたら奢ってくれる約束は?」
「まだあけてないだろ」
卒業しても、この関係は続いた。
どんな関係なんだろう。
言い表すことのできない。
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