お前なんか雷と同じくらい嫌いだ!

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その時。 窓の外が真っ白に光ったかと思うと、電気が消えた。 「え?停電?」 勝己がそう言った。 と、 ピシャーン! もう一度閃光が走り、雷が鳴った。 それを聞いて、俺はどさっとカバンを落とした。 「あ、あ、あぁ…」 その音を聞いて体がガタガタ震えだす。 「仁藤君?」 見えなくても、腕で振動が伝わるのだろう。 異変に気が付いたが、俺は呼びかける声も聞こえない。 もう一度。今度はもっと大きな音で。 バアァァーン!! と外が光った。 「ひぃっ!!」 「!!」 気が付いたら、勝己の胸に飛び込んでいた。 男が突然抱き着いてきて震えているのだから驚くに決まっている。 というか自分も驚いている。 よりにもよって、自分が敵視している奴に抱き着いてしまったのだから。 「仁藤君、大丈夫?」 「うっうっわ、わり・・・っ」 相手は困惑しながら心配する。 思わず謝ったが外からはずっとゴロゴロ聞こえて離れられない。 荒く息をする。心臓がバクバク言っている。汗も涙も止まらない。 静かな部屋。 何も見えない。 でもひっきりなしに外は光って大きな音がする。 動けない。 そんな時。 ぎゅっと。 背中に手が回されたのを感じた。 頭、撫でられてる…? (へ…?) 何が起こっているのか確認できない。 でも、なんだか落ち着いた。 だけど、音がもう一度大きくなった時。 「!仁藤君!!」 ぷつっと意識が飛んで、力が抜けた。 崩れ落ちる俺を支える勝己の声が遠くで聞こえた。
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