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ハレテラス祭り。
それは、この国で毎年夏に行われる祭りである。現在、王都の零番街を中心に多くの屋台が出て、大賑わいを見せている真っ最中だった。
その祭りのメイン会場となる、零番街の噴水広場。そのあたりの爆弾を仕掛けた、と予告してきたテロ組織があったのだ。
こういうことをする連中は決まっている。先代王、つまり僕の父。その弟であるネイト叔父さんを支持する団体だ。当初はちょっと過激な政治団体だったのが、先代王が亡くなった後息子の僕が跡継ぎに任命されると、一気に過激派テロ組織に早変わりしてしまったのだった。ネイト叔父さん本人とはトラブルもなく、穏便に王位を継承したというのに。
彼等は僕が継承して以来、平和なこの国で時折トラブルを起こして頭を悩ませる存在だった。が、まさかついに王都で爆弾テロ騒ぎを起こすとまで言いだすだなんて!
「ど、どうしましょう王様」
将校は泣きそうな顔で言う。
「爆弾が仕掛けられたかもしれないから避難しろ、なんて人々に言ったら大パニックが起きます……!むしろ、爆弾が爆発するより死傷者が出るかもしれません」
「だ、だよね」
「そもそも、無理に避難させようとしたら、テロ組織が怒って即座に爆弾を爆発させるかも……」
そこなのだ、問題は。彼等は、僕が王位をネイト叔父さんに継承すると宣言しなければ、三時鐘が鳴ると同時に広場の爆弾を爆破させると言ってきているのである。
あと三時間。その間に、広場の人々を非難させて爆弾を安全に処理しなければいけない。が、彼等をパニックにさせずに避難させる方法なんてあるのだろうか?
「……俺も、その兵士さんの意見に賛成だ」
がばり、とソファーから身を起こして言いだしたのはリア。
「ていうか、爆弾騒ぎなら俺も経験してる。ああいう時は、真実を即座に伝えるのは悪手だ。屋外だから少しマシとはいえ、それでも一番街方向に人が殺到してドミノ倒しになって人がたくさん死ぬのは目に見えてるだろ。王宮の上から見たけど、渋谷のスクランブル交差点ばりの混雑だったしな」
「し、渋谷ってのはわからないけど……王都が一番混雑する時期なのは間違いないんだ。どうすれば……」
「パニックにならずに、人が移動すりゃいいんだろ」
彼はすっくりと立ち上がり、真剣な目で僕を見て言ったのだった。
「なあ、俺に任せてくれねーかな」
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