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【 プロローグ 】
結局、ここへ来てしまった。
あのことをどうしても確かめたくて。
真夏の夜の住宅街。遠くから虫の音が聞こえてくる。
辺りは薄暗い街頭がぼんやりと私を照らし、アスファルトに少し長めの影を落としていた。
見上げると、彼のアパートの部屋の明かりも既に消えて真っ暗だ。
私はアパートの前の塀を忍者のように、ヒラリと登った。
塀の上を伝い、軽い足取りでバランスを取りながら、彼の部屋へと近づく。
二階にある彼の部屋。ふと覗くと、窓が少し開いている。
塀から庭の木に飛び移り、そこから更に彼の部屋のベランダへと侵入した。
静まり返ったこの夜の街で、私の小さな心臓は、トクントクンと微かな音を立てた。
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