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【 侵入者 】
ゆっくりと歩みを進めて行くと、湿り気のある古いベランダの床板がギギギと嫌な音を立てる。
15センチほど開いている部屋の窓から、こっそり彼のことを覗いてみる。
すると、目の前にキラリと光るものが見えた。
「おい、てめぇ何勝手に覗いてんだよ」
「きゃっ!」
少し低いドスの効いた声が室内から聞こえてきたのと同時に、私はあっという間にベランダでその声の主に体を押さえつけられてしまった。
「こんな夜中に、小娘が人の家に侵入するなんて、許せねぇ!」
「お願い、見逃して!」
「何言ってやがるんだ! 見逃せる訳ねぇだろ!」
色黒のそいつは、私の上に乗っかり、すごい力で強く押さえつけてくる。
「やめて!」
「お前が悪いんだよ! 人様の家にこっそり入ろうとしやがって!」
そう言って、私の首元にいきなり噛みついた。
「きゃーーっ! やめてーーっ!」
「うるせぇ! この泥棒ネコが!」
私の小さな白い体は、色黒で大柄なそいつの体に完全に覆われてしまった。
そして、私の声は虚しくこの静まり返った街に響き渡る。
「いやーーっ!」
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