【 犯罪者 】

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【 犯罪者 】

 私は彼を(にら)みつけて、必死に抵抗し言葉を発する。 「これは犯罪よ!」 「はぁ? 何言ってやがるんだ。猫の世界にそんなものは存在しないんだよ!」 「猫の世界でもこれはいけないことよ!」 「そんなのは、聞いたことねぇな」  そう、私は白いメス猫。  そして、今、私の上に覆いかぶさっているのは、体の大きな黒いオス猫。  彼の飼い猫で、名前はティグルという。  なぜかは分からないけど、いつの間にか自分は『猫ちゃん』になっていた。 「ご主人様の家に無断侵入するやつは、例え女、子供だろうが、関係ねぇ。容赦はしねぇ!」 「ちょっと待って。私の話を聞いて、ティグル」 「理由なんて関係ねぇんだよ。誰だろうがな」 「私は、あなたのご主人様の彼女よ」 「はぁ? 俺のご主人様の彼女だぁ?」 「そうよ」  黒猫のティグルは、笑いながら呆れた様子。 「ははは。お前、面白いことを言うな。人間が猫になったってか?」 「そうなの。私の顔を見て。目の下に2つ横に並んだホクロがあるでしょ?」  ティグルは、私の顔をじーっと見て、ホクロを確認している。 「確かに2つ並んだホクロはあるが、それだけではご主人様の彼女かどうかは分からねぇな」 「じゃあ、これならどう?」  そう言って私は、おへその下にある2つ横に並んだホクロを指さした。
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