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【 浮気はゆるさない 】
「お前、来月結婚するんだろ? 俺のご主人様と」
「ええ……」
そう、私は彼と来月結婚式を挙げる予定。
でも、最近の彼は女性の影がちらつき、私と会うよりもその長い茶髪の美女と会っている回数の方が多く、何度もその美女と一緒に仲良く歩いているのを見かけてしまった。
そして、この彼のアパートへ一緒に入って行く姿も……。
彼にそのことを直接言えず、自分が猫になってしまったことで、今日こうしてこっそりと確かめに来たんだ。
「俺は全てを知ってるぜ。なんせ俺様は、ご主人様とずっと一緒に暮らしているからな」
「じゃあ、やっぱり友樹はあの茶髪の美女と浮気を……」
「ああ、してるな」
「そんな……。う、うぅぅ……」
私は項垂れて、大きな瞳から涙がポロポロと零れ出した。
そんな私の姿を見て、ティグルは言う。
「あ~、まあそう悲観するな。お前は猫になったんだ。猫の世界でもお前みたいにかわいいやつはそうそういねぇ。だから、自信は落とすな。美亜」
「ふうぅ……」
涙が止まらない。猫になっても涙は出てくるんだ。ポロポロと。
そんな状況に、ティグルは耐えきれなくなったのか、なぜか急にやさしくなる。
「あ~、美亜、ごめん。俺、うそついた。ご主人様は浮気なんかしてねぇよ……」
「えっ?」
私が顔を上げると、ティグルは何か頭の後ろをポリポリと肉球で掻いている。
「あの茶髪の美女は、ご主人様のお姉さんだ」
「えっ? 友樹のお姉さん?」
「ああ、そうだ。何やらご主人様は女心というものがよく分からないみたいで、自分の姉に色々と女目線でどうなのかをアドバイスもらっているらしい。何やらサプライズを考えているみたいだ」
「そ、そうなの?」
「ああ、だから安心しな。ご主人様はお前のことを愛しているよ。っていうか、俺様も見ていられないくらいにな」
「そうだったんだ。教えてくれて、ありがとう。ティグル」
ティグルはなぜか恥ずかしそうに、チラリと私を見てから、この美しい星空を見上げた。
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