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一方その頃、慶汰もいつも通り鷹汰との雑誌の撮影に挑んでいたが、どれだけ写真を撮ってもカメラマンが首を縦に振らなかった。
「どの写真もいいけど、慶汰くんがね…」
と言われてしまい、慶汰が謝罪をするとカメラマンから時間を貰い少し休憩することになった。そこで気持ちをしっかりして欲しいと…。
お茶を飲んで周りのスタッフさんと談笑する鷹汰に比べて、慶汰は休憩することなくじーっとモニターを見て自分の写真を見ていた。自分の悪い点を見つけようと。
確かにどれも悪くは無いが良くもなかった。
いつもしている撮影なのに今日は何かが違った、いったいどうして…と考えていると、いきなり後ろから抱きつかれて振り返ると鷹汰だった。
「なーに、考えてんの?」
「鷹汰…別に…」
ふいっと顔を逸らすと鷹汰は不機嫌そうな顔になり、そして言い放ってしまった。
「そんなになるほどあいつがいいのかよ」
「え……」
鷹汰の言葉に目を見開いて驚いたが、いつの間にか頭の中は冬夜でたくさんだった。もう消えない存在になっていたのだ。
その事が分かってしまうと慶汰は口を開いた。
「…悪いな、鷹汰…俺、冬夜が好きだ…」
「っ…何でパッと出の奴がいいんだよ…俺だってずっと慶汰のことが好きで、お前に近づこうとする奴は全部俺推しにしてやろうと嫌なことでも頑張っていたのに…」
まさかの出来事に慶汰も周りで聞いていた人達もザワついてしまった。
鷹汰はよく色んな人と遊んでいてそれは男女問わずだったから周りからは遊び人と言われていた。慶汰も何回か怒ったが直らなかったので放置していたのだが…
こういう理由だったのは初めて知ったのだ。
「鷹汰、それは悪い…俺のせいだったんだな」
「!なら、俺の元に…「それは…ごめん」
鷹汰が言い終わる前に謝罪をしてそのまま慶汰は続けた。
「俺の中であいつは…冬夜はかなり大きな特別な存在なんだ、あいつがいないと俺はもう無理みたいだ」
そう伝えると鷹汰はゆっくり目を閉じて「そっか…」とだけ呟いてから目を開くと何かを決心した顔をしていて慶汰に近づいて胸ぐらを掴んで自分の方に引き寄せて口付けをした。
いきなりのことで慶汰は驚きを隠せずにいると、唇が離れて鷹汰がデコピンをしてきた。
「いってぇ!おいテメェ…!」
「ちゃんと捕まえろよ、逃がしたりしたら許さねぇからな。キスとデコピンは俺からの応援だ、ばーか」
「鷹汰…わりぃな…」
それだけ言うと慶汰はカメラマンの方に向かい、色々話し合いだして…鷹汰はぽつんと1人になるとボソッと呟いた。
「あーあ、俺ももう兄離れか…寂しくなるじゃん、ばーか…」
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