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恋人一日目なのに
植草のささやきが頭から離れない。ふれられたところが、痺れたみたいになっている。
されたことを思い出すうちに体が熱くなってきた。
(あ、これは……まずい)
植草のことを思い浮かべながら、下半身を弄るのはいやだ。そんなことをしたら、彼を汚しているみたいだ。
シーツを握り締めて、岡田は目を閉じた。
――――――――――
植草は自分の部屋で、スマホを見つめていた。明け方に眠ったので、昼頃に目が覚めた。夏休みでなければ、完全に遅刻だった。
岡田に送ったメッセージを何度読み直した。
「なぜだ……ロマンチックなやりとりというより、僕が一方的に岡田くんにエッチな言葉を送っている感じがする……」
岡田からは既読マークはついたが、返信はない。
「そうだ! こういうときは電話しよう!」
植草は岡田に電話をかけてみる。呼び出し音が数回鳴った後、受話口から声が聞こえてきた。
「もしもし、植草か?」
「うん。あのさ、メッセージだけど」
「ああ。読んだ」
「……返信がなかったから、その……気になって……」
「すまない。いろいろ考えて、返事できなかった。……植草。どういうことになったんだ?」
「どうって?」
「か、体の変なところが、変な状況に、なるって……」
「……あ、いや、ごめん。それ、僕の言い間違い。よく考えたら、そんなこと起こらないから、安心してくれ」
「そうなのか?」
「そうだ」
「よかった」
「本当に?」
「ああ。もう、たくさんいろんなことしたいのかなって思った。俺たち、まだ恋人一日目なのに」
「そうだな、一日目なのに」
植草は冷や汗をかいた。
(昨日のきみに興奮したって言いにくいな……まるで、がっついてるみたいだ)
植草は言葉を選んで話すことにした。
「恋人になったんだから、恋人らしいことしないか?」
「なにをするんだ?」
「デートだよ」
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