俺のことが好きなのか?

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俺のことが好きなのか?

ふれるだけの優しいキスだった。岡田は植草をじっと見つめる。 「もっと、すごいのをすると思ったよ」 「外だと恥ずかしいって言うと思ったんだ」 「……前のキスとちがう気がする」 植草は面白そうな顔をした。 「え、どうちがうんだ?」 「前のはドキドキしたけど、いまのは、なんか……キュンとした」 植草は眼鏡を押し上げる。 「そうか。ドキドキは減ったが、キュンが増えたか……研究しがいがあるな、キスは」 またな、と言って、植草は帰っていった。 岡田は手を振りながら、自分の唇を撫でた。 (順番を間違ってないか? 俺たち……) 岡田は自分の部屋で、スマホの画面を見つめていた。 今日、コラボカフェのデートのあとに届いたメッセージ。 『岡田くんとのキスは、すればするほど興奮する』 『お互い初めてなのに、キスが上手くなったんだろうか?』 『キスをネット検索したんだ。岡田くんにしたいキスをたくさん見つけた。キスは奥深い』 『次にきみにキスするのが楽しみだ』 (これって、やっぱり……) 岡田はベッドの上で正座していた。 (植草は俺のことが好きなんじゃないか?) 岡田は自分の胸に手をあてた。鼓動が速くなっている。 (植草は俺を好きかよくわからないと言った。でも、メッセージの内容はどうだ? キスを何度もしたがるのは、俺のことを好きだという意味じゃないか?) 岡田はスマホを手に取ると、植草に電話をかけた。呼び出し音が数回鳴ったあと、植草が出た。 「もしもし、岡田くん。どうかした?」 「あのさ、植草。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」 「なんだい?」 「植草って、俺のことが好きなのか?」 沈黙が流れた。岡田は不安になり、もう一度尋ねてみる。 「植草?」 「……どうして、そう思うんだ?」
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