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ふたりでいるときは名前で
「ごめん、無理させて」
「平気だよ。俺も望んでたことだから」
植草の部屋で、ベッドの上で抱き合っていた。
抱かれた甘い余韻で、岡田はうとうとしていた。
眠そうにしている岡田の髪を指で梳かしながら、植草は微笑んでいる。
「ふわふわでかわいいな、やっぱり」
「そうかな」
「ずっとさわりたい。……岡田くん、僕を好きになってくれてありがとう」
「植草こそ」
「うん。僕は幸せだ」
「俺だって」
額をくっつけて笑う。
「これから、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
どちらからともなく、唇をかさねた。
「あのさ、名前で呼んでいいか?」
「もちろんだよ。俺も呼ぶ」
「じゃあ、陸って呼ばせてもらうよ」
「うん」
「陸」
「実」
名前を呼び合い、また笑い合った。
この瞬間が永遠に続けばいいと思った。
――――――――――
「岡田くん」
「おぉ、植草。おはよう」
夏休みが終わり、二学期が始まった。教室で植草と会った。
「久しぶり」
「そうだな」
「元気だった?」
「まあまあ」
「宿題、ちゃんとした?」
「したよ」
久しぶりに会うのに変わらない会話。それが嬉しくもあり、少し寂しい。
(恋人になったはずなんだけどな……)
まだ実感がわかない。
「岡田くん、今日時間ある?」
「うん。なんで?」
「話したいことがあるんだ」
「わかった。どこに行く?」
「僕のうちに来てくれないか?誰もいないから」
「え」
「だめかな……」
「い、いや、いいけど」
「よかった」
植草が微笑む。その笑顔に見惚れてしまう。
(きれいだな)
植草の顔立ちは整っていると思う。
(俺なんかで、本当にいいのかな……)
不安になってしまう。
(でも、植草は俺を選んでくれた。そして、俺も植草を選んだんだ)
放課後、植草と並んで歩き出す。
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