いいよなあ、恋をするって

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いいよなあ、恋をするって

付き合う見込みのない相手に貢ぐことが意地らしいって意味だろうか。 それとも、大人から見れば、意味のない行動に見えるのか。 岡田は思考を切り替えようとした。悪い意味にとらえるのはよくない。 「す、好きだから、です……。それだけです。ほんと、それだけで……」 岡田はワンショルダーリュックの肩紐を、ぎゅっと握った。 スリムなデザインの黒のワンショルダーリュックは、植草が十一月生まれの岡田にくれたプレゼントだ。 『岡田くんは姿勢がいいから、小さなリュックを背負うとますますカッコよくなるよ!』 岡田は休日になると、ワンショルダーリュックに大切なものを詰め込んで持ち歩いている。 奈良は気まずそうな顔をした。 「ちゃかしてごめんな。青春っていいなと思っただけでさ。よし、ひと肌脱ぐか」 奈良は、レジがある台の引き出しを開けた。 「この辺に……あった、あった。兄ちゃんにこれやるわ」 渡されたのは、手のひらに乗るくらいのサイズの細長い筒みたいなものが二個。ライトブルーとグリーンだ。中に透明な液体が入っている。 「ペアフレグランスだよ。ミニサイズのアトマイザーなんだけど、それなりに値が張るよ。お友達といっしょに使って」 「いいんですか? 高いものならお金を払わないと」 「ええって。おじさんは、兄ちゃんの初恋に力を貸したいだけ」 「初恋って……まあ、初恋ですけど……」 「いいよなあ、恋をするって。まっすぐでまぶしいわ」 やっぱり、からかっているのかもしれない、と岡田は思った。 でも奈良は、優しい眼差しで岡田を見ている。 (高校生の恋って、大人から見ればまぶしいのかなあ。大人だって、昔は高校生だったのに) 「それじゃあ、いただきます。ありがとうございます。……あれ?」 よく見ると、アトマイザーにはどちらも日付けがプリントされている。翌日の日付けだ。
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