子どもとの約束

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子どもとの約束

 私は二人の息子がいますが、長男は口から生まれたようで、一時も黙ってはいられない性格。学校から帰宅してからもずっとしゃべり続けていました。  次男はあまり話はしないけれど、こちらからいろいろ聞けば、言葉を選んで落ち着いた返答が帰ってくるような子供でした。  きっと、長男のおしゃべり攻撃や、普段の子育てにつかれてしまって、私が約束を忘れたことが一番の事件の原因だったかもしれません。  ある夏の夜。  小学校高学年と低学年の息子二人ははスイミングと体操スクールが一緒になったところに通っていました。そのころ住んでいた団地のバス停にスクールのバスが子供を送ってくれるので、迎えに行く前の時間、もうすぐ暮れ始める3階の部屋で、先に布団を敷いてしまおうと寝室に向かった時の事でした。  その頃、寝室にしている部屋には、子供の学習机が置かれており、結構狭い中で息子たちと私は寝ていました。夫は隣りの部屋で寝ていました。  寝室に入った時、『ガサガサッ』と何かの物音がしました。最初はどこから音がしているのかが分からなくて、部屋のあちこちに体を寄せ、音の元を探りました。  どうやら、長男の机から聞こえているのです。でも、机の中からガサガサ音がするなんて、尋常ではありません。  ところで、私はほとんどすべての虫が大嫌いです。今の時期にはセミが怖くてうっかり外も歩けません。でも、音の元を放っておくこともできないし、お布団を敷いてから事件が起きるのはもっと嫌だったので(きっとこのとき何となくわかっていたんですよね)そぉっと音のしている、長男の学習机の一番大きい引き出しを少しだけ開けました。  光に反応したのか、『バサバサバサ』っとさっきより明らかに大きい音で白い何かが羽ばたいているのが見えてしまいました。蛾でした。最悪です。その下にはドングリが山のように入っていました。  私には蛾は採れません。いや、長男だってあんなに大きな蛾を採れるかはわかりませんが、とりあえず、バスのつくところまでお迎えに行き、帰る道すがら、長男に事情を話しました。殺虫剤も考えましたが、蛾の鱗粉がベチャッとなる様は想像しただけでも恐ろしかったので、とにかく捕獲して、外に放してきてもらうように長男にお願いしました。  そもそも、どんぐりは拾ってきて、自分で独楽を作ったりして、遊んだら外に戻す約束になっていました。絶対に何かの虫が入っているからです。  何せ団地だったので自然が豊かでドングリがすごく沢山落ちているのです。最初はゆでてから遊ばせていましたが、拾ってくる量が多くなるとゆでる事すら追い付かないくらいでした。それなので、遊び終わったらその日のうちに捨てることを約束していたのです。  そして、捨てると言う約束を私は子供が実行していると思い、捨てると言ったあの日の約束を実行したのかを確認していなかったのでした。  結局、長男だけでは逃げてしまいそうだったので、次男も手伝って、二人で一階まで降りて、芝生の中に蛾を放してきてもらえました。  その後、残っているドングリもすべて袋に詰めて、公園のドングリの木の下に捨ててきてもらいました。
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