蘇る

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蘇る

なんて暗い夜だろう。 星がひとつ、月あかりのおかげで明るさをかろうじて保っていた暗い森に落ちた。 ただ、月光を浴びて光る景色は何処か艶かしい美しさがあった。 黒猫が目の前を横切った。 尻尾は長めで目は鷹のように鋭く見えた。 なんて不吉なことだ。はやく、行かなくては。 心の在りどころに、私の魂の在りどころに。 少し森を行くと小さな教会がある。 知っているのは私とさっきの黒猫くらいではないだろうか。神父のお爺さんは他界してしまい、もう使われていないから。 古ぼけた教会。窓は土や雨の跡で汚れ、埃が積もっている。見た目は簡素で内装も至ってシンプルだ。何の面白味もないのかもしれない。 しかし、それでいいのだ。昔を連想させる古風なデザインは心を静かに、落ち着かせてくれる。新しい、古いでいうと古いものの方が価値が高い。 今にも崩れそうに見えるその家をしばし眺めたあと、そのなかに入ると静寂の夜を崇めるように、風は唸った。 全ては魂だ。 この教会も、この長椅子も、全てが。 全ては消えては生まれを繰り返している。儚いとは滅相もない。消えるから美しいし、限りあるから大切にできるのだ。 消えゆくといっても、完全に消えるわけではない。必ず生き返るのだ。見えない形で。 礼拝堂までの道に赤いカーペットが敷かれている。土で黒ずみ、年月によって毛玉ができボロボロになっている。 私は歩き出す。ゆっくり、ゆっくりと。神の目の前なのだから、焦ってはならない。 心を鎮め、感情を落ち着かせる。私の唯一神。私を思ってくれる貴方に。この身を捧げるために。 ずっと、ずっと思っていた。神と、いつまでも共にいたいと。神とひとつになりたいと......。 首に両手を当てる。 途端、微笑みを崩した。 よく見ると、ナイフが転がっている。辺りは赤黒い血が乾いて硬くなっていた。神は、私にこれを望んでいる。そう思い手に取ってみた。 月光に照らされ、神に微笑まれ。 私は生涯を終えるのだ。ああ、美しき神よ。 私は貴方に........。 これが思いつく、最期の信仰心の気持ち。神父を手にかけ、寺院を焼き払った私にお似合いの罰を。 胸にナイフを構える。二年前のものだったはずだから、切れ味は悪くないだろう。にこりと神に向かって微笑む。 今日は13日の金曜日。 いつまでも、見守っていてください。 最期の願いは如何に?そう聞こえた気がした。 私は途切れそうなか細い声で囁く。 「永遠の…絶望を」
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