ラスト・セブンデイズ

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 *** 『2022年8月5日 金曜日。  今日で、セミさんが地上に出てきてから六日目。セミさんは、明日までしか生きることができません。  命って、何なのでしょうか。  セミさんは、今日も何度も飛ぼうとして、何度もうまくいかなくて地面に落ちてしまっています。落ちるたび、ひめいが上がります。とても痛そうです。  どうしてそんなにがんばるのでしょう。  がんばった先に、何があるのでしょう。  誰かがほめてくれるわけでもないのに、認めてくれるわけでもないのに、世界のヒーローになれるわけでもないのに、どうして?  私が尋ねると、男の子は言いました。 「自分で、やるって決めたからやるんだよ。そこでやめちゃったら、ぼくは、ぼくにウソをついちゃったことになる。それだけはだめだ」 「どうして?」 「自分との、約束をやぶることになるからさ」  セミさんがそこまでがんばる理由が、私にはわかりません。  でも、いっしょうけんめいがんばって、何かを達成しようとする人はとてもかっこいいなと思いました。  私は、そこまでがんばったことがあったでしょうか。  水泳のスクールもいやになってやめちゃったし、かけっこの練習もやめちゃった。どうせがんばっても勝てないなら、がんばってもいみがないって、かっこわるいだけだって。  でも、そんなことなかった。  本当にかっこわるいのは、がんばることもしないのに、がんばる人を笑う人なんだと気が付いたのです。 「がんばって、セミさん!」  気が付いたら、私はおうえんの声を出していました。  セミさんの体が、ふわっとうきあがるのを見ました』
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