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「何してるの?」
「あ、これは、違うんだ」
「何が違うの?」
2人は、裸。事が終わりピロートークでもしていたのだろうか。
「最低!」
そのままバタン! とドアを閉めて、マンションを出た。
驚き過ぎて、悔しくて、涙も出ない。
人は、怒り過ぎると涙すら出ないんだと知った。
ボーっとし過ぎて、電車で帰る気にもならず、手を挙げてタクシーを止めていた。
家の住所を伝え、ずっと黙ったまま外の景色を見ていた。そういう時に限って、やたらとカップルの姿が目につく。
──私たちもあんなに仲が良かったのになあ
この4年間は、何だったんだろう
40分後、家に着いた。
そのまま、部屋に篭った。
翌日は、土曜日でお休みだから良かった。ご飯も喉を通らず何も食べずに過ごした。
翔から何度もメッセージと着信があった。
開く気にもならず、そのまま放置。
母親が心配して話しかける。
「どうしたの? 何かあったの?」
言えるわけがない。結婚しようと思っていた相手に浮気されただなんて……
『だから止めて良かったのよ』と言われかねない。
会社の同僚にメッセージを送り、全てを伝えた。
〈酷い! 何それ! もうそんな奴ダメだよ。咲希も違う恋をしたら? まだ若いんだし……〉
******
それ以来、翔とは連絡も取らず、自然消滅状態。
悔しいが心のどこかには、まだ好きだという気持ちが残っていた。でも、もう無理だ。もしかすると、一度じゃなかったのかもしれない。それが許せなかった。
若かったから……
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