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あれから月日は流れて。
風花は今、僕の前で、真っ白いドレスをまとい、白いブーケを持って、この場にいる誰よりも、晴れ晴れとした綺麗な表情で立っている。
だけど、指輪は僕と一緒に選んだものではなくて。
他の誰かと肩を寄せ合って選んだ、プラチナの指輪を、左の薬指にはめている。
「眞ちゃん」
世界一幸福そうに笑いながら、風花は目を潤ませて、紅を差したくちびるを持ち上げる。
「わたし、幸せになるから」
ああ、あの日の約束を、君はもう忘れたのかな。それとも、覚えていてなお、他の相手を選んだのかな。
訊くのは意地悪だ。
冠の思い出を過去にして、僕も精一杯破顔する。
「結婚おめでとう、風花」
ちゃんと笑えていたかどうかは、自分でもわからない。
シロツメクサの指輪では彼女の心をつかまえておけなかった悔恨は、この先僕が別の誰かに指輪を贈ったとしても、いつまでも残るだろう。
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