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zwei
ガーデニアの花弁すら全て散らしてしまうような雨が降っている。
「すごい雨だね、カミーユ。私は雨が好きだけれど、カミーユは嫌い?」
「ふふ、モーリスが好きならわたしも好きだよ。晴れのほうが好きなのは否めないけれどね」
気怠い体を起こし、寄り添いあって互いの熱を奪う。
昨夜の盛り上がりに、恥ずかしそうにカミーユはモーリスの曝け出された胸元に顔を埋め、微かに枯れた声で、“モーリス。可笑しなことを聞いてもいい?”と囁く。
枕元に置かれていた水差しでグラスに水を注ぎ、カミーユに差し出しながらモーリスは静かに頷く。
「モーリス…あなたは、永遠を何だと考える?永遠になるには、どうしたらいい…?」
「永遠…は、果てないもの…だよね。そうだね…永遠になる…難しいね。超常的な存在になる…とか、かな?」
「…わたしはね。すべてが終わって、それが印象に残るものになれば…永遠が、始まると思うんだ。…どうせ、この体ではあなたとの子供も望めない。幸せだけれど、この暮らしはつらいの。…もう終わらせよう、アルケミラ。わたしの聖女。愛しているなら、終わらせて」
静かに、けれどはっきりとカミーユの柔らかな声は室内に響く。
モーリスはカミーユを抱き締め、静かに聞いている。薄紫色の髪に染み付いたローズマリーの力強い香りがふわりと漂う。
静寂が耳障りになり始めたころ、モーリスは口を開く。“納得なんてしたくないよ、カミーユ。私は君を愛してる。生きて、君を愛したい”と、涙声でカミーユに言った。
カミーユは、顔を上げてモーリスの目をじっと見つめる。アルケミラモリスの特徴である星形の花が、モーリスの瞳の奥に咲いているのを認め、“きれい、”と呟き瞼を閉じた。
カミーユが死に希望を抱いているのだろう、とモーリスは思った。私の手で、最期まで私を見て、死にたいのだろう、と。モーリスはカミーユの肩に顔を埋め、“私のマリア、どうか私の我儘も聞いておくれ”と囁く。
「…私が君を永遠にしてみせるよ。ただ、真に永遠になれるように…深山に入りたいと思うんだ。君を愛している。だから、もう少しだけこの世界で私と生きてくれないか」
瞼はゆっくりと開かれ、美しく煌めくカミーユの瞳から涙が溢れ出す。
その涙を拭い、モーリスはそっとカミーユの頬に口付け、頬を撫で、モーリスはカミーユを手にかける日を想って憂い、目を閉じた。
嗚咽交じりの荒い息遣いが静かな森に響く。
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