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「随分と変わったなあ……」  私はお盆休みを利用して鎌倉にやって来た。観光客の賑わいに少しだけ気後れする。高校生の時は大騒ぎしながらこの道を通ったはずなのに。私は額の汗を手の甲で拭った。  私が変わっても稲村ケ崎公園からの景色は変わらない。  遠くに江の島が見える。白い細長い物体は展望台だ。太陽のギラギラした光が海に反射して光のつぶを生み出す。  あの時見た景色と同じ美しさのはずなのに何かが違う。何かが……足りない。  私は鞄からオレンジジュースを取り出して一口飲んだ。  少し遠くで、ショートカットの女性がペットボトルの飲料を飲むのが見えた。私は自然とその光景を目にする。ただ風景の中に女性が映りこんできたに過ぎない。  その何てこともない光景に私は目を大きく開いた。手にしていたものが無糖のアイスティーだったからだ。  もしかして。いや、まさかね。有り得ない。そんなことあるわけない。  私の頭の中で否定の言葉が通り過ぎて行く。頭の中が混乱しながらも私は躊躇いなくあの子の名前を呼んでいた。   「夏子(なつこ)?」  無糖のアイスティーを飲んでいた女性が、私の声で振り返る。  ああ。あの時に見たのはこの景色だった。  海をバックにしたヒマワリ。 「鎌倉に来てまでオレンジジュースなの?」 「そういうあんたこそ。無糖のアイスティーじゃん」  お互いに購入したペットボトルを指さしあって笑う。  そこには確かにオレンジジュースを持った女子高生と無糖のアイスティーを持った女子高生がいた。
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