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0ー1章 秘密実験
昭和20年1月。佐世保から廻って来た伊号第四百四潜水艦は、第六艦隊司令部より作戦決定を受け7月23日に合流地点のパラオウルシー環礁に向けて、青森大湊を静かに出発した。
伊四百型潜水艦は、全長122m、乗員200名という当時世界最大の潜水艦であるだけでなく、内部に攻撃機3機を格納しその航続可能距離は地球1周半。世界中どこの場所でも攻撃できる「潜水空母」といわれた。
しかし最後に製造された伊号第四百四だけは、本来特殊攻撃機「晴嵐」が搭載されているべき場所に、巨大な鉄球のような装置が設置されていた。
その球状装置からは、クモの足のように鉄骨がいくつも潜水艦内部に張り巡らされ、中空に固定されていた。
しかも、その鉄球内には一人の少年が閉じ込められていた。彼の名は園部清治(14)。召集年齢に達していなかったが、海軍技術部からの特命により乗船していた。
アメリカ軍の潜水艦ソナーは太平洋戦争開戦後急激に進化、パッシブソナーの開発と高度化が進む中で、日本軍の雑音抑制が不完全な捕音機と敵に探知される恐れのあるアクティブソナーは時代遅れとなっていた。
新しいソナーの開発が急務の中、同盟国ドイツから特殊な研究データが日本に届けられた。
それは、「menschliche Sonarisierung(人間ソナー)」
超高度な聴力を持つ子供を水中測的術の特殊訓練をすることで、雑音に影響されることなく遠距離の敵艦隊の発する音を探知する事が出来るというものであった。
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