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 告白して振られて告白して振られて告白して振られて。  高校一年、二年、三年と同一人物に告白した俺の今の現状。  高校の卒業式を間近に控えた二月下旬。春の陽気はまだ当分先のようで、東京都内上空は鉛色の空が覆っている。  同一人物に三回告白するほど、俺はあの子のことが好きだったし、今でもその想いは変わらないのだと思う。  いや、きっと多分この先一生、その子のことを忘れることは出来ないし、忘れようとしても忘れることのできるものではないのかもしれない。  十八歳のこの俺が。十五歳から十八歳まで想い続けていた人。  彼女の名前は伏せておこうと思う。ここでは仮称でAさんと呼ぶことにする。  俺自身をBだと仮定して、俺にはCという男友達が存在した。CはAの幼馴染み。家が隣同士で子供の頃から一緒らしかった。  Cが事故死したのは俺が高校二年生の夏休み。Aへの想いはCにも相談はしていた。  突然の訃報に俺は言葉をなくした。言葉なんて出やしなかった。自然と涙は流れなかった。  Aへの三回の告白は全て夏休み中に行っている。高校二年の夏休み。Aに告白し振られ、その翌日にCが事故死した。  なんの因果か高校二年の夏休み終盤。俺は突然Aに近所の公園に呼び出された。  夕方の公園。ブランコに乗ってAのことを待ち続ける俺。  公園入口からAが現れた。 「待った?」  Aにそう問われ俺は首を横に振る。  Aはそのまま俺の隣のブランコに座った。俯いた表情はなんだか元気がなさそうだ。無理もない幼馴染を亡くしたのだから。  俺はAの方に身体を向けずに真っ正面でブランコに乗った状態で勢いよく漕ぎ出す。ギコギコ揺れるブランコの音が静かな公園内に小さく響く。  Aが小さく口を開く。 「去年の夏休みにさ、B私に告白してきたよね。そしてこの間もBは私に告白してきた。二回とも私から振っちゃったけど。実はさ私Cのことが好きだったんだ」  薄々そうなんだろうなとは予感はしていた。Aは幼馴染みのCのことが好き。俺のことは恋愛対象としては見てはいない。  ブランコを漕ぎながら俺は言った。 「やっぱりなあ、そうだと思ってたんだよ。AはCのことが好き。でもさ、あいつもうこの世にいないよ」  Aの俯く姿勢は変わらない。長い黒髪が顔全体を覆って表情が見えない。 「死んでもやっぱり好きなもの?」  無言の返答を返してくるA。きっとこの場では俺はデリカシーのない男としてAに認識されている。 「死んだらさ、いなくなっちゃうんだよ。好きである対象がいなくなる。恋心を向ける先がなくなるわけだよな。だったら別の方向に向ければいいじゃん」  ブランコの勢いはどんどん増していき、俺は童心に返ったかのように思う存分ブランコを漕ぎ続けた。  Aがポツリと小声で呟く。 「本当に死んだんだよね」  妙な現実味を帯びたそのセリフに俺のブランコを漕ぐ勢いが幾分弱まる。そのまま俺はブランコを漕ぐことをやめ、Aと横並び同じ位置にブランコを止めた。 「Cはさ、死んだよ」  現実を突きつけるかのように俺はAに静かに言った。俯いた姿勢のままきっとAは涙を流している。多分そんな気がする。 「死んだ人を想い続けるなんてそんな馬鹿な話ないよ。叶わない恋だと分かってて、その人を想い続けても何も前進しないと俺は思うよ」  無情な言葉に映ったのだろうか。Aはそのまま沈黙してしまった。  俺は決してAのことを励ましたかったわけではない。ただ一つの事実を事実として伝えたかっただけだ。Aはきっと自ら現実逃避している。それを強引に引き寄せるのが俺の役目。  Aは座っていたブランコから立ち上がると俺には目もくれず一目散に公園をあとにしてしまった。  一人公園内に残された俺は小さく舌打ちをした。  本当の俺はAのことを励ましたかったのかもしれない。それを出来なかった自分を恥じ、俺はブランコに座ったまま泣きそうになっていた。  俺だって悲しい。Cは俺の友達だった。Aは俺以上に悲しい。幼少の頃からの幼馴染みなんだもの。  夕暮れの空が次第に暗くなってくる。  暗くなって夜になる。それが過ぎれば空は明るくなり朝になる。結局はその繰り返し。  当時高校二年生だった俺はソレが当然のことだと思っていた。  Cにはその繰り返しはもう訪れない。  Bである俺とAにはソノ繰り返しは今後も訪れる。死ぬまで一生確実に永遠に。  俺はこの時Cとしたある約束を思い出していた。  その約束はこの物語の終盤で話すことにする。今話すことでもない。  俺はブランコから降り公園をあとにした。
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