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犬養さんと猿渡さんは今年も犬猿の仲? 最終話
思い出してきた。
二本目の勝負として猿渡さんが提案したのはチューだった。「チューをして、逃げた方が負け」という無茶苦茶な勝負だ。私は、チュー避けの技術は熟練したが、避けない技術は習得していない。
っていうか、なんでチュー勝負なんかをしなくてちゃいけないんだ! と言おうとした瞬間には勝負がはじまり完敗していた。
その後、三本目の勝負で酒の飲み比べをすることになり、結果的に二人とも裸でたたずむ現在に至る。
「つか、後半の記憶があやふや過ぎるんだけど。こんなんで読者さんが納得するはずないでしょう!」
「そんなこと私に言われてもねぇ」
猿渡さんは、相変わらずタバコを加える雰囲気でチョコをポリポリ食べている。
「なんだったら、明確に描写できるように、もう一回やってみる?」
「やらないよ!」
「なに? 気持ちよくなかった?」
余裕の笑みの猿渡さん。気持ちよかった。気持ちよかったからダメなのだ。どうして、よりによって猿渡さんと……。
三本目の酒飲み勝負は引き分けだった。と言いたいところだが、多分、私の負けだ。私はフラフラで、猿渡さんの肩を借りて歩いているような状態だったから。
そして、ホテルの上層階にあるバーから出て、ロビーのソファーで休んでいるときに、また猿渡さんからキスをされた。
そのキスは、今までのどのキスよりもやさしくて、官能的で、情熱的だった。くしくも、初詣で願った「夜景が見える場所でロマンチックなキス」が叶ってしまったのだ。
だから、ついつい、本当についついここまで来てしまった。
「はぁー、気持ちよかったから、ダメなんだよ……」
大きくため息をつきながら漏らす。
「ああ、初エッチが気持ちよすぎると、次からが大変ってこと?」
「違う! エッチの話じゃなくて! ……ロビーでのキス……いつもと違った。いつもは無理やりなのに……」
「無理矢理になっちゃうのは、子ザルちゃんが逃げるからでしょう」
「いきなりキスされそうになったら、誰だって逃げるよ!」
「いきなりって、いつも誘ってるのは子ザルちゃんじゃない」
「はぁ? そんなことしてないし!」
こいつ、頭がおかしいんじゃないか? 私は誘ったことなんて一度もない。
「二人きりになるようにワザと昼休憩遅くしたり、何か言いたげにジッと見つめたりするじゃん」
「いやいやいやいや、それは単なる偶然であって、誘っているわけじゃないから!」
「あんな目で見られたら、ムラムラするでしょう」
「目が合っただけでムラムラするとか、どんなだよ!」
こいつ、絶対おかしい。ああ、頭が痛い。よりによって、こんな奴に初チューと初エッチを奪われるなんて。
猿渡さんは、やっぱりプリンとしたバストを丸出しにしたままチョコをポリポリ食べている。
「いつまでマッパでチョコ食べてるんだよ! 乳丸出しだろ! 服着ろよ!」
「子ザルちゃんも丸出しだよ。それに、好きでしょう? おっぱい」
「好きだよ!」
「でしょう? 触りたい? それとも触られたい?」
猿渡さんは、チョコを食べる手を止めて私の方に向き直る。そして、ニヤニヤしながらジリジリと私ににじり寄る。
私は、プルプルと揺れる猿渡さんのおっぱいに目を奪われつつ後ろに下がる。
やっぱり、猿渡さんはキケン人物だ。
今年も猿渡さんとは、きっと、おそらく、絶対に、仲良くなれない、かもしれない。
了
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