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「おい」
背中越しに話しかけられ、智也は小さくため息をついて声の方へ振り向いた。
「なに?」
振り向いた先にいたのは三人の男子生徒。授業中から智也の方を見て意地の悪い笑みを浮かべていた三人だ。
「お前、無優病にからまれたんだって?」
笑みを隠すこともせず、男子生徒は智也に尋ねる。やはりその話かと智也は眉を顰めた。彼らのその笑みを見れば、どんな不愉快な発言が出てくるのか簡単に予想がつく。
「気が合うんだろ、猫かぶりの『偽善病』患者とは」
「似た者同士だもんな、智也君」
一人の男子生徒に追従するように、残りのふたりが口を開く。
智也が他人から抱かれる印象、お人好し。言うなれば偽善者。優しい、正義感が強い、曲がったことが嫌い。言い方はいくらでもある。しかし智也が抱かれる印象にはこの、偽善者というものが一番多かった。
「その『偽善病』って言うの、やめてくれないか」
その理由のひとつがこの『偽善病』という、無優病の別名のせいだった。
普段はおとなしい智也が毅然と言い返したことに、三人は一瞬だけたじろぐ。だが最初に話しかけてきたリーダー格の男子は、それが癇に障ったのだろう。より好戦的に智也を睨みつけた。
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