15人が本棚に入れています
本棚に追加
透き通るほど薄く感じるオレンジ色の光が、雨で曇った窓から差し込む。
光が瞼に隠れた視覚を刺激する。
もう…朝か…
パイプ椅子に背中を預けて休んでいたのだが、そのまま寝てしまっていたようだ。体を起こそうと力を籠めると、四肢の節々が鈍い悲鳴を上げる。
あと少し踏ん張れば立ち上がれる態勢まで移行したところで、腰に電気が走ったような衝撃を受けた。
「うぅ」と短いうめき声をあげ、再度全身をパイプ椅子へと預ける。
ちらりと古びた腕時計を見ると、短い針が6と7の間を指示している。
2時間ほど眠ることができていたようだ。四肢の調子は良くないが、脳は正常な思考を取り戻している。
僕は生暖かい箱の中にいる。
その箱の内部は濁った白色で側面と上面を塗装されている。
下面は薄汚れたベージュ色をしている。
箱の中には生活に必要なものが一式揃っている。
ベッドや椅子、照明、タンス、テレビ、エアコンだけでない。
箱と外界とを仕切る引き戸の近くには、トイレと洗面所が区切れれて存在する。
この空間には日常生活に必要なもの以外も置かれている。それは、時々鳥の鳴き声のように音を立てるモニターや、透明の液体が入ったパックを吊るした支柱などだ。それらの用途がわからない複数のものは、チューブやケーブルようなものを介して、ある1か所でまとめられている。
その位置はベッドの上。
ある女性へ繋がれている。
僕の妻だ。
最初のコメントを投稿しよう!