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-プルルルル
『梓ちゃん、例のお客さん来たよ』
呼ばれて内繋がりのドアを抜け、煌々と明るいバックヤードのドアも抜けて薄暗く照明を絞ったBARへと出て行く。
「今晩は。BARあずさへようこそ♪」
自分なりの最大限に明るい声で登場した私を一斉に客は見る。
「おや、ママ久しぶりだねぇ」
カウンターの常連客がそういって迎えてくれたお陰でまわりの客も「あぁ、そうなんだ」と納得した雰囲気になった。
「今晩は、藤枝さま。今日も相変わらず素敵ですね」
ニコっと笑顔で返すけれど、その言葉は藤枝の後ろのモノへと投げたもの。
藤枝もそれをわかっているから「ありがとう」と返してくる。
彼のうしろには寄り添うように、美しい藤の妖精が佇んでいる。彼女は藤枝の家の守り神のようなものだ。当主となった彼にいつも寄り添っている。
「今日あたりママが出て来るんじゃないかとおもってたよ」
「あら、そうですか?うふふ」
それから“見える”藤枝には奥の個室に通された女の子たちに“憑いているモノ”が見えるからこそ、そういう云いまわしをしてくる。
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