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あるところに森がありました。
たくさんの獣たちとたくさんの魔物たちとたくさんのそれ以外のものたちと、たくさんのよくわからないものが住む賑やかな森です。
たくさんいたのでたくさんごはんが必要でした。お腹が空くと木の実を食べました。川の水も飲みました。魚は怖がってみんなどこかへ逃げてしまいました。
変な色の草を食べました。お腹が痛くなって吐いたりもしました。
彼らはお腹を空かせていました。
森に住む彼らは仲間ではありません。食べるイスに座る時もあれば、食べられるテーブルに乗せられる時もあります。
それが「森」という世界なのです。
コンコンコン♪
コンコンコン♪
ノックを三回いたしましょう
コンコンコン♪
コンコンコン♪
ノックを三回あなたに向けて
森に住む彼らは森を勝手に出てはいけません。森を出るには扉を通らなくてはいけません。その扉は大きな大木の幹にあります。大木が許さないと扉は開きません。
だから森に住む彼らは勝手に外へ出ることができないのです。
勝手に外へ出ることができないということは、勝手に森へ入ることができないということでもあります。
外にはこわあいこわあい魔物たちや、大きな大きな獣たちがわんさかいます。そして、おいしいおいしい獲物たちもたくさんいます。
バカでおいしい獲物に人という生き物がいました。ちょっとおとなしくして声をかければ、おバカな人はすぐに近づいてきます。
人は彼らの言葉がわかると、よく聴くために近くへやってくるのです。彼らをよく見ようと、言いつけを簡単に破って夜の暗い道を歩いてくるのです。
なんておバカな人たちでしょう。
人が住む村や町では、その森に決して近づいてはいけないとルールがありました。そう。森と同じように「村」も「町」もそれぞれ一つの世界だったのです。それを行き交いできるのはほんの一握りでした。
それでも人は時にルールを破って外に出てしまうことがあります。人の世界にある扉は人が自分で開くことができたからです。決められたルールを破りたいと思った人は、その扉を自分で勝手に開いては外へ出ていってしまうのです。
ルールは破ってはいけません。
ルールは守るためにあるのです。守るために作られたのです。守らせるために作られたのです。
ルールを破ってはいけないのです。
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