7人が本棚に入れています
本棚に追加
さて、「約束」ではなく「ルール」を課せられた村や町の人はどうでしょうか。
人は無闇にルールを作りたがります。これをしてはいけない。あれをしてはいけない。一つの枷が外れても他の枷が獲物を縛っていられるようにするためです。せっかく産まれた獲物を逃がしたくなくて、人は必死なのでしょう。なんておバカな生き物なこと。
そのルールの一つとして村や町の外へ出て森に行ってはいけないというものがあるのです。ルールを破った人は帰ってきませんでした。だからルールを守る人はこう思ったのです。
「扉の向こうにある森へ行ったら帰ってこられない」
誰も森に行った人がどうなったのか知りません。語る人が帰ってこないのだから当然です。
帰ってこられないから行ってはいけない。誰もがそう思いました。
森に行ってはいけない。特に、夜の森には近づいてはいけない。
それは特に重要なルールでした。重要だからこそ、誰もが子に厳しく守らせようとしたのです。
親も子も、何故重要なのか理解しないまま育てられます。その次の孫も、きっと理解しないままそのルールを守らされます。それが教育というものなのです。
ルールを守らせるということが、人にとって最も重要で価値のあるルールである。そう信じる人ほどルールの本質に気づくことができないまま、一生を枷に囚われ続けるのです。
そう、人はずっと枷に囚われ続けるのです。
重いでしょう。辛いでしょう。苦しいでしょう。時にルールは雁字搦めになり重荷となるでしょう。腕を縛ります。足を縛ります。首を縛ります。重いでしょう。辛いでしょう。苦しいでしょう。嫌でイヤでそれでも守らされるのでしょう。守れ守れと強制されるから余計に嫌になるのでしょう。
時に人はその枷から逃げ出したくなる。苦しくて苦しくて息ができなくなる。その苦しさはやがて血を流すほどの痛みを伴ってあなたを襲うでしょう。逃げたい。逃げたい。逃げ出したい。そこから逃げ出したい。ここから逃げ出したい。でも逃げ出せない。
人はいつだってそこから逃げ出したいのです。ルールだらけで自由のない、ツマラナイ世界から逃げ出したいのです。
だから世界はとっておきのルールを用意しましたとさ。
コンコンコン♪
コンコンコン♪
ノックを三回銀の音
コンコンコン♪ コンコンコン♪
コンコンコンコン
コンコンコン♪
叩いているのはリスじゃない
最初のコメントを投稿しよう!