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(…る)
目の裏が真っ赤に染まる。
伸ばした手。
ずるりと滑って掴めなかった腕。
(…るき)
火傷しそうに熱い血涙が頬を伝う。
『それにッ…触れるな!!
〇〇…ッ!!』
『〇〇さ、ま…』
ゴボっと喉の奥に血が溢れ、息が詰まる。
「はーるーきー!!」
ふっと目が開く。
天に突き上げるように伸ばしたままの手。
目尻から流れる熱い涙。
「……」
「もー起きてよ?
私出る」
ボーっとしたまま顔を少し傾けると背を向けた女が狭い玄関で靴を履いている。
慌ただしくドアが閉まる。
頭…重…
のろのろとベッドから起き上がると顔を伏せた。
喉の奥にはまだ血の味が残っているみたいだ。
これは現実じゃない。
これは現実じゃない。
これは、この世界はーー
「………」
カチ、カチ…と機械的な時計の音が部屋に響く。
「…………んー…」
ぼりぼりと頭を掻く。
……目が覚めた。
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