245人が本棚に入れています
本棚に追加
⁑⁑⁑⁑⁑
空に憧れ、空に見捨てられた者たちが作り上げた虚構の天——。
そこには無数の飛空挺が、鳥が、竜が——飛び回っていた。
街の中心には一つの塔がある。
白銀の双翼をモチーフとした二つの翼が重なったような外観の塔だ。
虚構の天を貫き、その塔はまるで、女神が住まう遥か彼方――〝天空の園〟まで永遠に伸びるかのように建っていた。
だが、その塔は女神の世界はおろか、地上に届くことすらも決してない。
この天、この世界、それ自体が〝彼ら〟を閉じ込める箱庭なのだ。
塔の主人は最上階に一人で眠っていた——。
シワだらけの顔には生気がなく、体は痩せ細り、最早、自分一人で動くことすらもできない。
その指は震えながら、最後の役割を果たすかのように、宙へと魔の力を宿した文字を刻んでいく。
「そうか……シアよ。再び共に歩むものを見つけたのだな。なれば——」
最初のコメントを投稿しよう!