200人が本棚に入れています
本棚に追加
/364ページ
——「楽しそうだね、クラウン」
レオンに話しかけられたクラウンは、少しばつが悪そうに視線を逸らす。
「——ん。まぁな、お前らといると飽きねぇよ」
「そうか、僕も感謝してるんだよ。僕と本当に対等に話してくれるのは君くらいだからね」
「お前……」
「さて、そろそろ分かれ道だね。じゃあまた明日かな」
レオンはそこで話を切り上げた——。
「レオン様、私も家まで一緒に!」
「私も付き合うとしよう」
「いつも言ってるけど、僕がお供してもらうんじゃなくて結局、僕が君達を家に届けることになるんじゃないか……」
レオンの家に行って、そこから帰るのでは二人の帰りが夜遅くになる。
結局はレオンが二人を家に届けることになるのが恒例だ。
そしてクラウンとユタも帰り道が違うため、ここでいつも解散になる。
「んじゃまた明日なぁ〜」
「うん、バイバイ!」
レオンの両隣をしっかりとキープしたマリーとリザ、二人にサンドイッチされて、溜息混じりながらも今日も家まで送ることにしたらしいレオン。
そしてビスケットをつまんだことで元気になったらしいユタに別れを告げてクラウンは歩き出す。
クラウンは中学までは自分が、今のような学生生活を送ることになるとは、思ってもみなかった。
容姿端麗ではあるが、故郷ヴォルガラード帝国の主要民族であるニヴル人特有の紅く鋭い目つき、色素が抜けきったような白過ぎる肌。
これは差別の対象ではないが、王国ではどうしても目立つ。
それは時に興味本位の悪意を向けられることにも繋がった。
だが、生まれ持っての容姿が注目されること自体には慣れている。
それにこの容姿は、髪色を変えていようとも、たった一人の姉との繋がりを感じさせてくれる大切なものだ。
銀色に染めた髪、学生に似つかわしくないシルバーアクセサリーを好んで付けることも、学校や街でいちゃもんを付けられては喧嘩に繋がる要因になった。
だが、髪を染めようとも、アクセサリーを付けようとも、自分の趣味で何故他人にとやかく言われなければいけないのか。
納得のいかないことに従う気はない。
相手が腕力に訴えるというのならば、こちらも真っ向から戦うだけだ。
そういったものと戦い続けてきたのが、中学までのクラウンの日常だった。
「まぁ、こういうのも悪くねぇな。それにしてもレオンの奴……あぁ、めんどくせぇ!あいつ、人の問題には簡単に首突っ込むくせ、自分のことは何も語ろうとしねぇのいい加減にしろってんだよ」
クラウンは苛立たしげに自慢の銀糸を搔きむしると、ゆっくりと歩き出す。
わざわざ来なくても良いとは何度も言ってるのだが、直に姉を乗せた車が迎えに来るだろう。
「——うっ!!」
その痛みは突如、訪れた——。
クラウンの胸は、かつて経験したこともないほどの痛みを訴えていた。
視界もついには、ぼやけはじめ、彼は何とか近くの建物の壁を目指して歩き出す。
「くそっ! 何なんだよ、この痛みはっ!!」
——トットットッ……。
前方からブーツが、地面を歩く特徴的な音が近付いてくる。
一人の男の姿をクラウンの瞳は捉えた。
だが、視界の悪くなっている瞳が映すその姿は朧げで、実態を感じさせない。
——「よぉ。見つけたぜ、魔術師……!!」
※作品を読んでくださる皆様へ
作者の皐月紫音です。
この度は貴重なお時間を使って『UnderGround Magica』をお読みくださり、ありがとうございます!!
表紙でもあるヒロインのグレイシアのイラストをこちらに貼っておきます。
イラストレーターはmikou様Twitter kou_c1 です。
こちらを参考に物語をより、楽しんでいただければと思います。
本棚やスターなどいただければ、とても励みになります。
必ずや皆様を楽しませる物語をこれからもお届けしますのでよろしくお願いします!!
![3b74e60f-63b7-411e-9813-3d319c5996de](https://img.estar.jp/public/user_upload/3b74e60f-63b7-411e-9813-3d319c5996de.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!