ANGRY DUNK

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「おまえの身長なら絶対エースになれる。俺はこう見えて前の中学ではキャプテンだったんだ。俺たちで時代を築こうぜ。おまえの力が必要だ」  変な奴だと思った。野蛮な噂を知りながら誘ってくるなんて。  ただ、それがたまらなくうれしかった。エースになれるなんて言葉よりも、本音を言えば寂しかったのだ。  そしてなによりも見上げてくる自信に満ちた顔を見下ろしていると、不思議となんでもできるような気持ちになる。 「おまえダンクとかできるんじゃね?」 「いやいや、ムリだよ」 「ちょっと飛んでみろよ」 「え? うーん、仕方ないなぁ」  渋々承諾したのは、なぜかできる気がしたからだけではない。その目の中に、少しばかりの羨ましさのようなものを感じたからだった。 「いや、本気で飛べよ」 「いやいや、本気で飛んだけど」 「……よし、わかった。今日から毎日スクワットやれ。俺がおまえをダンクができる選手にしてやる」  別の意味で面倒くさい奴にからまれた。そう思いながら歩く大樹の背筋は、まっすぐに伸びていた。  小さな転校生、一星(いっせい)はその後大樹を引き連れて入部をするとメキメキと頭角を表していった。  大樹は市内では誰よりも長身だった。中学校のバスケットにおいてそれは未経験だとしても大きなアドバンテージだった。内気な性格の長身を一星が上手く活かしてくれる。気付けば三年生の夏、県大会まであと一歩。  大樹は馴染んだバスケットシューズの紐を、ギュッと締めた。
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