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夕暮れの公園で鼻血を拭った一星はポツリとつぶやいた。
「悔しいよな。負けた途端に文句言いやがって」
「一星くん、だから俺も行くって言ったじゃん!」
いつになく鼻息の荒い大樹は言いようのない迫力があった。そうか、この顔で先輩たちをしめたのかと一星は思い浮かべて笑った。
「やめとけ、また噂になるだろ? それに俺たちには次がある」
「でも」
「いいから。まったくおまえはその強気な顔で試合に出れば、マジで無双できるのに」
二人は同じ高校に進むことを決めていた。強豪校では大樹の存在が埋もれてしまう。選んだのは、市内でも弱小高校と呼び名が高い高校だった。
「俺たちの時代を築こうぜ」
「そうだね、次こそは心から楽しめる環境で」
「そうだな、部活以外もな。よし、大樹。おまえちょっと飛んでみろ。ぼちぼち届くんじゃねーか? リング」
「え? また? 仕方ないなぁ」
出会った頃よりは若干高く浮いた親友の大きな足を見て、一星は微笑んだ。
「よし、高校まで毎日スクワットだ」
月日は流れ、三年後の夏──。
順調にゴールネットを揺らし続けて来た二人の前に、大きな壁が立ちはだかっていた。
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