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エブリス学園も、ここまでか──。
ギャラリーの誰もがそう思いはじめているなか、一星は声を張り上げた。
「諦めるな! ここからが正念場──」
その頭上をボールがアーチを描きながら飛んで行く。
「くそ、またか! 大樹、止めろ!」
ゴール下でボールを受け取った敵チームのセンター高杉が、不敵な笑みを浮かべた。ボールを持ったまま両腕を挙げて振り返る。全国でもトップクラスであろう長身の持ち主が浮かべる強気な表情からは、取れるものなら取ってみろと心の声が聞こえて来るようだった。
しかし対峙するディフェンスの大樹もまた、高杉ほどではないが高身長ではある。
「大樹!」
叫んだ一星の視線の先で、張り合った大樹が弾き飛ばされた。高杉の手がボールを掴んだままリングを通り越す。
大樹は絶望的な顔でそれを見上げた。
ボールがリングの上から叩き込まれ、会場は歓声に包まれる。大樹の目の前を、ボールが跳ねて行く。
テンテンテン……と転がるボールを見る大樹の表情には、すでに諦めの色が滲んでいた。悲願の県大会出場を目前に、こんなバケモノみたいな奴が立ちはだかるとは──。
前半戦が始まって半分ほどが経過したところで、すでに三十点差。そのほとんどはこの試合から突然現れた敵チームのセンター、高杉によって付けられたものだった。
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