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「リバウンド!」
味方チームのシュートがリングに弾かれると、二本の腕が伸びた。
同時に飛び上がった二人のセンターの競り合いは、大樹に軍配が挙がった。落下する位置から見ても、タイミングを見ても明らかだった。
「ナイスリバウンド! 打て!」
大樹は腕を伸ばした。チーム内で誰よりもリングに近い男は、最大到達点からボールを放つ。
しかしそれがいつもよりも低い打点であることを一星は見抜いていた。やや後方へ反るような体の軸がその原因を象徴している。目の前の敵、高杉がダンクシュートでも決めるかのような構えで飛び上がっていたからだ。
「ナイスブロック!」
弾かれたボールに一星は飛び付いた。情け無いが予測通りだった。
「宮田!」
叫びながらスリーポイントライン上の宮田を見た。
「だよなぁ」
大きな影が視線の先を塞ぐ。
──クソ、どんだけ反射神経がいいんだ。
たまらず姿勢を崩しながら、シュートへと切り替える。外しても大樹がいる。ゴール下で他のディフェンスと身長のミスマッチがある。入っても入らなくてもいい、とりあえず打てば──。
「リバウンド!」
歪な曲線を描いたシュートを、リングが弾き返した。大樹がまっすぐ手を伸ばす。
「オラァ!」
しかしそこへ、巨大なシルエットが勢いよく飛び掛かる。
「うわ!」
審判のホイッスルが鳴り響いた。
「白、九番! プッシング!」
高杉のファウルだ。あまりにも強烈な、タックルのような突撃にギャラリーはどよめいた。
「あーすまんすまん」
大樹は目の前に伸びてきた高杉のゴツゴツした手に、ニコッと笑った。手を握り、目線を腕から顔にかけて辿らせる。
「いや、大丈夫だよ。君の方こそ──」
大樹は言いかけて固まった。猛禽類のように鋭い目をした高杉が、口元を愉快そうに歪ませている。
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