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止まらない怒涛の攻撃が続く。またリバウンドを取った高杉が猛スピードで走って行く。
「行かせるか!」
先読みしていた一星は相手のゴール付近で両手を広げ待ち構えた。
左右に並走する敵がいる。状況は三人対一人、選択肢はパスしかない。
右か左か、一瞬のタイミングを待つ。相手の選択を読み取ろうと、高杉の目に全神経を集中させた。一歩先では逆をつかれる、同時に動いてこそカットができる。
これ以上は、決めさせるわけにはいかない。
近づいてくる巨大な男はボールを掴み、一歩二歩と大きなステップを踏んだ。
──あれ? コイツ……。
ガツンというリングを叩きつける音とともに、ホイッスルが鳴り、審判は叫んだ。
「オフェンスチャージ、白、九番!」
まさかパスをせずにそのまま突っ込んでくるとは思いもしなかった。
鼻からは生温かいものが伝っていた。
「一星くん大丈夫? 鼻血」
「あぁ、大丈夫だ」
一星は何かを感じ取り、チラリと高杉を見た。相手のキャプテンが何かを言っているが、シラを切るような顔で聞く耳を持たない様子だ。
「気を付けろよ、まったく」
「へっ、これだからバスケなんてのは」
その会話に今まで感じていた違和感が繋がっていく。
恐らく高杉は秘密兵器的存在だ。日に焼けたような肌、強引過ぎる動き。
何者かはわからないが、他の部活動から引き抜いてきた選手だ。県大会出場をかけたこの一戦、大樹への対策として投入された選手に違いない。
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