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「なんだよおまえ、背中丸めて」
突然話しかけて来た転校生は随分と口の立つ奴だと思った。ましてや自分よりも三十センチくらいは低いであろう背丈の持ち主だ。
「おまえだろ? この中学で問題起こしたのは」
「……知らない」
中学校二年の夏休みを目前に面倒な奴にからまれたと思った大樹は、素知らぬ顔でその場を去ろうとした。どういうつもりか知らないが、もううんざりしている。
「先輩しめたんだってな。それも五人も」
「だから知らないって」
「目立ちそうだもんな、おまえ」
別に目立ちたいわけではない。むしろひっそりと過ごしたいくらいだ。
しめた、なんていうつもりも無い。ただあまりにもしつこくからんで来る血気盛んな先輩たちから、身を守らざるをえなかった。それだけだ。
『でかい』というだけでなぜか喧嘩が強いなどとしょうもないレッテルを貼られて以来、執拗に追い回されていた。地元でも素行が悪いことで有名なこの学校は、背中を丸めて歩きたくなるほど居心地が悪い。
「別に好きで目立ってるわけじゃないよ」
追い回された分だけ友達も目をつけられ、自然と距離を置くようになった。気弱な大人しい仲間たちだった。野蛮な噂も飛び交い、学校生活は息苦しいものになった。
ようやくあと半年で先輩たちが卒業するというのに、また腕試しの相手なんて勘弁だ。目の前の転校生は小柄ながらも挑戦的で気の強い目をしている。人を試すような、見計らうような狡猾さもうかがえる。
その顔が自信に満ちた表情に変わり、目は鋭さを増し、大樹への距離を詰めた。
「……喧嘩ならしないよ」
「は? 喧嘩? するわけないじゃん」
「え?」
「バスケ部入ろうぜ。俺と一緒に」
「バスケ?」
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