17人が本棚に入れています
本棚に追加
──数日後。
その日、ケイは【三輪タクシーで行く!事故物件巡り心霊ツアー2022 IN七王子】に参加し、帰宅したのは明け方だった。
「いやー……最っ高だったぜ。やっぱ三輪交通は突き抜けてるわ」
ガチ霊と存分に戯れた余韻に浸りながら彼がリビングに入ると。
「ん?」
リビングテーブルの上に、新聞広告らしき紙がうず高く積まれている。しかも一つや二つの束じゃない。
「古紙回収の出し忘れか?」
見ればソファの上でチャーコがプギー……と寝息を立てている。
「コイツ、また寝藁で寝てない……」
ふと彼の目に紙束の一番上が目に入った。
けいえ。らぶれた いちまんまい
ミミズがのたくったような珍妙なひらがなは、紛れもなくチャーコの筆跡。
「ラブレター……俺に? って、一万枚!?」
紙束を確かめると紙面いっぱいに大きな文字がひとつずつ。それを順にめくっていくと。
が ん ば ゆ け い が す ち
「……おいコラ。頑張る、だろが」
だが拙い文字はまだ続いている。
が ん ば や な い け い も す ち
「…………」
ぜ ん ぶ す ち ♥️ ♥️ ♥️
「……すき、だろ」
それは100%丸ごとのチャーコ。出会った時から今も、そしてこれからも変わらない──ずっと。
「はは……、ハートが途中からヒヅメの型押しになってるじゃねぇか。めんどくなったな?」
それでも10000枚近く、スタンプ台と便箋(裏が白の新聞広告)を交互にぺったんぺったん。その作業は大変だっただろう。
「ん?」
なぜか10枚を数えた辺りからヒヅメの形が変わっている。
最初のコメントを投稿しよう!