美海

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美海

「あっくん!!あっくん!」 小泉美海は大学二年の時知りあい 以来十数年親友を続けてきた、伊藤明敏の名前を強く呼んだ。 私たちは惹かれ合っていたが、どちらも一歩を踏み出すことはしなかった。 そのうち、この男の横が心地よくなり私はいつも、何かあればそこで泣いた。 涙を見せることで、慰めてもらえることも私を突き放すことが出来なくなることも知っていたからだ。 「私、恋愛しない!向いてないのよ」 部屋の片隅。肩を並べながらあっくんにまた愚痴をこぼす。 「じゃあ、そろそろ俺で落ちつけば?」 そう投げ掛けられることはないのか、と期待しなかったことがない訳ではない。 だが、そうならないことも知っていた。この10年私たちは少しも、変わっていないから。
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