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チューニング9回目 楽譜
無事に楽器を出し終わると、私はテューバを壁によりかからせ椅子に座り込んだ。
「どうしたん?そんなに疲れたー?」
早苗が聞いてくるが逆に聞く。お前は疲れなかったのか?
とそんなことを聞けるぐらい回復はしていなかった。
「…精神的と、肉体的どっちともつかれました。」
そう言うと甘泉先輩はふふっと笑った。女でも見とれてしまうような笑みだ。
「そうよね。それと一つ忠告。楽器事故(楽器をぶつけること)したら報告しに行くのよ?大きいから楽器事故しやすいけど気をつけて」
甘泉先輩ーーーー!どうやって気をつけろと?
「はーい!」
早苗は元気よく返事をしたが、どうやったらそんな元気になれるのだ?
そう思っているとき、いつの間にかどこかへ行っていた山本先輩から紙を渡された。
「…これ…楽譜…」
私はピアノをしていたので、大体は読める。
「ありがとうございますー!」
早苗はニコニコ笑顔で楽譜を受け取った。私は少し頭を下げると受け取る。
シ♭ーシ♭ーファー。
同じことがずっと続いている楽譜。
そう思った矢先に、天野先輩は私の肩をドンと叩く。
「同じような楽譜だろう?」
私は無言でうなずいた。早苗は楽譜が読めないのか、よくわからなそうな顔をしている。
「俺も一年の頃はそう思ったものさ。だけどな、テューバのベースがあることで曲が成り立ってるんだよ。」
天野先輩にしてはかなりまともなことを言うではないか。
「…俺…一回…テューバ抜きの合奏聞いたけど…テューバなかったら…すごい軽い演奏だった…。」
山本先輩が話す。
「ええ!陸そのとおりよ。」
甘泉先輩は満足そうだ。
軽く感じるのか。私はそう思うと少し嬉しくなって楽譜を抱きしめた。
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