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チューニング11回目 マッピ
「わかったあああああああ〜〜!」
早苗の元気な声で必死に楽譜を読んでいた私は顔を上げた。
「すごいじゃない!単細胞が頑張ったわね。」
甘泉先輩の少し皮肉の混ざった声は、きっと天野先輩を取られたことについて少し、悔しがっているからだろうか。
早苗の顔に悪気はない。
「それじゃあ…美穂ちゃんもわかったかしら。」
「あ…はい。」
急に話を振られて少し驚いた。
「じゃあ、楽器を吹いてみよう!!」
天野先輩は、甘泉先輩の後ろにいつの間にか立つと、楽器を持ち上げた。
「そんな…軽々と…。」
テューバは確か10kgあるはずだ。なのに片手で持ち上げられている。
なぜ…。
「…先輩方…楽器の前…に…」
「陸どうした?」
山本先輩は天野先輩から少し距離を置くと、発言をする。
「…マッピ…。」
マッピ…とはあれか。通称マウスピースと言っていたやつか。
山本先輩の発言で甘泉先輩と天野先輩の顔色が変わった。
「…忘れてたわ。陸ありがとう。」
「…そうだったな。新入生が来たもんだから張り切りすぎてたな。」
山本先輩は少しうつむくと頬が赤い。それだけ発言に慣れていないのか。
少し不思議な空気のなかで爆弾を投下したのは早苗だ。
「先輩方〜??マッピってなんですか!?」
最初に説明されたはず…。だが早苗がそんなこと覚えているほどの脳の持ち主だとは思わない。
「マッピというのはコレのこと。この銀色のもののことね。楽器の唇に置かれる部分。マウスピースは、リムで囲まれた円形の開口部で、カップと呼ばれる半球形の空洞を介して器具につながっているの。カップから、より小さな開口部が、バックボアと呼ばれる先細りの円筒状通路につながるのよ。」
急に専門用語が出てきて私でもよくわからなかった。甘泉先輩は詳しくは調べてみるといいわよ。と笑う。
とにかく楽器を吹く前にマッピを吹かないといけないそうだ。
「マッピを吹くことをバジングというのよ。「buzzing」で虫の羽音に似ているから、そうつけられたらしいわ。」
私はへえ〜〜と思いながらマッピを口に当てる。そして少し空気を入れてみたが、ただ空気が通り抜けただけだった。
すると、隣でものすごい爆音が聞こえる。天野先輩だ。本当に虫が飛んでいるような音。
ブブブーーー。
「コレくらいの音を出せるようにならないとだめだなぁ〜〜。」
天野先輩は満足そうに言った。
くそ〜〜こうなったら意地でも出してやる!私は口へマッピを当てると息を思いっきり入れた。
きれいなバジングができるようになるまで残り30秒。
※文中の甘泉先輩の言葉
「楽器の唇に置かれる部分。マウスピースは、リムで囲まれた円形の開口部で、カップと呼ばれる半球形の空洞を介して器具につながっているの。カップから、より小さな開口部が、バックボアと呼ばれる先細りの円筒状通路につながるのよ。」
は、ウィキペディアの
「楽器の唇に置かれる部分です。マウスピースは、リムで囲まれた円形の開口部であり、カップと呼ばれる半球形または円錐形の空洞を介して器具につながります。カップから、より小さな開口部が、バックボアと呼ばれる先細りの円筒状通路につながります」
を少し編集、加筆したものです。
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