チューニング14回目 合奏

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チューニング14回目 合奏

そうして甘泉先輩からぎっしり知識を教え込まれて1ヶ月後。 早苗の吹き方がかなりましになってきた頃。 私は…音楽室にいます。 指揮者の方の顧問の先生のアツが強すぎる…。 どうしてこのようなことになったのかと言うと…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「美穂ちゃんはかなり音もいいし、音が小さいのが玉に瑕だけど一回合奏してみよっか。」 甘泉先輩の一言が始まりだ。 「それがいいな。」 天野先輩の一言で更に圧が高まる。 「…いいと…思う。」 おおおおい!!山本先輩! というわけで山本先輩のひと押しで私は合奏することに決まってしまったのだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 音楽室はかなり狭く感じた。 クラリネットが先頭。 ふと後ろを見上げるとそこには光を反射して輝く、トランペットがあった。 「…美穂ちゃん…。よそ見しないの…!」 甘泉先輩は小さく私にそういう。 私はテューバを支える力が少し弱まっていたことに気づくと、持ち直した。 「さぁ、じゃあまずデイリートレーニングからしましょう。」 顔が小さめでアイドルと言っても通りそうな指揮者の先生だ。 だが顔を観察している暇もなく、小太鼓がリズムを刻んだ。 タンタンタン。 最初にテューバの音が聞こえる。 私は慌てて甘泉先輩の方を見た。山本先輩は一生懸命吹いている。 天野先輩は…早苗にびっしりと教えこんでいるせいでいまここにはいない。 次にテューバより少し高い音が聞こえた。 これは…トロンボーン、ユーフォか。 隣では、髪の短い女の先輩がユーフォを吹いている。 2拍してからまた次の音が聞こえた。 もう何の音かはわからない。 私は次々と聴こえるFの音を耳で聞きながら、甘泉先輩の方を見た。 私は、吹くのかな…とマッピに口を近づけたとき、甘泉先輩は小さく首を振った。 吹くな、ということだろう。 山本先輩が楽器を吹いている姿はかなり新鮮だ。 どんどん音が積まれていくとハーモニーができてくる。 そしてすべてのハーモニーが、できた後すべての音が一気になくなった。 音楽室はシーンとなった。 聴こえるのは、先輩方の息を吸う音だけ。 そして次の瞬間、さっきなっていたハーモニーが一度に音楽室に響きわたった。 きれいなハーモニーだ。テューバやフルートの音がうまく噛み合い、心地いい音になっている。 私はこの音を聞いて吹奏楽部に入ったのは間違いでないことを知った。
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