チューニング15回目 吹いて吸って

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チューニング15回目 吹いて吸って

「じゃあ美穂ちゃん、今からコレをやるわよ」 甘泉先輩のいたずらがこもった囁きに私は、うなずいてしまった。 コレをやるわよってどうやって。 「…最初に配った楽譜が今やったデイリートレーニングなの。それを譜読みしているでしょう?先生が多分もう一度やってくださるから、それに合わせて遅れてもいいから吹いてみて。」 山本先輩はテューバで見えなくなった顔をかろうじてこっちに向けると大きくうなずいた。やれ、ということだろう。 「さぁ、じゃあもう一回デイリートレーニングしましょう。」 先生の声に、先輩方はハイ!と元気な声で答える。もちろん山本先輩もだ。 タンタンタン。 はじめはテューバの音だ。私は遅れて入った。 次にユーフォやトロンボーン。 さっきと同じ。 メロディーが重なる。 自然と曲ができる。 きれいな音ができる…。 私は、吹く音を一段とでかくすると心から合奏を楽しんだ。
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