チューニング5回目 楽器決め

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チューニング5回目 楽器決め

次の日がやってきた。来てほしかったような来てほしくなかったような。 「今から楽器を発表します。」 顧問の先生がそう言うと私はトトロではないが、「え、もう?」と心底つぶやく。 「楽器は、昨日の楽器体験のとき先輩たちに良かったところ悪かったところなどを一人ひとり記載してもらいました。」 なるほど、それで楽器を決めたのか。 「希望通りじゃない人もいますけど、楽器に良し悪しなどありません。何になっても文句を言わないようにしてください。」 「はい!」 入部してから仕込まれた返事の大きさで一年生は答えた。 「それと、楽器は一応決まりますがその人に向いている楽器ではなかったら変更する場合もあります」 変更するのか。それはやだ。 「では発表します。まずは一番投票の多かったトランペットから。 トランペットは3人です。 尾崎かなえさん」 「は、はい!」 尾崎かなえと呼ばれたポニーテールの女の子が返事をする。 「蛙山港さん」 「はい。」 蛙山港すごい名前と、関係ないのに思った。最後の一人。私ですように…心から願った。 「最後は、さき…。」 さき、その次は…?」 「崎山翼さん。」 ショートカットの女の子が返事をした。私は、少し悲しくなったが、何故か納得してしまいそうになった。私はトランペットにピッタリの逸材ではないとわかっていたのかもしれない。 「では次、ユーフォニアム発表します。」 残念ながらユーフォも名前はなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーなかなか名前が呼ばれない。5つの希望全てに落ちたあとその名前が呼ばれた。 「テューバ。咲田美穂さん。」 テューバ…だと? 「咲田美穂さん。返事。」 脳内で楽器をうまく浮かべることはできなかったがとりあえず返事をした。 「は、はい!!」 「次、テューバ、秋田早苗さん。」 元気の良さそうな女の子が返事する。 「はい!」 「次、パーカッション。」 顧問の先生の声が次の楽器を発表する頃には私は緊張とはてなでいっぱいになった頭でぼんやりと、楽器を思い浮かべていた。たしか一番でかい楽器。 持つのがとても大変だった楽器なはず。 ナゼソンナガッキニナッタンデスカ。と顧問の先生を問い詰めたくなった。 明日から、楽器を実際に持って基礎練習が始まるらしい。だがそんなこと言われたって…。私はトランペットにならなかったことより、なぜテューバになったのかずっと疑問に思っていた。 私は細身で、あまり体力もない。持てるだろうか。第一どんな楽器だったかぼんやりとしか思い出せない。 わからない!! 私はそう思うと、家にたどり着くまでにフラフラしていた。
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